東埼玉新聞社
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 2010年11月18日 184号(復刊2号)
市長選 問われる「市長の常識」
 草加市政の混乱は、元助役の名誉回復を図るため、市長の権威と行政の公平性を利用して市民にウソをつき“情け”で行政を私物化したことにある
 木下博信市長による議会解散に伴って選出された新議会が再び木下市長の不信任を可決、木下市長は自動失職し市長選が行われる。一連の混乱は、木下氏が元助役への個人的な情を最優先して市長の職と行政を私物化――司法判断に敵対する「汚職事件はなかった」と発言、元助役の副市長起用問題では自らの発言を全面否定、汚職事件の反省を反古にしかねない言動から起きた。その説明はウソやスリカエが多く、市民を惑わすばかり。さらには、法に触れなければ何でもやり、自らがつくった条例に違反しても気が付かないという強権的で盲目的な行政運営に陥った。それは特定の人の声しか聞こえないからに他ならない。議会の不信任は当然のことである。
 市長選で問われるのは政策より、市長としての「常識・良識」「市民に対する誠実さ」「説明責任」であろう。

汚職事件をシロと“認識”し、副市長への復権を図ろうとした→「意図も予定もない」とウソ市民に誤解させている
 木下氏は汚職事件について「司法判断を尊重する」と言う。言葉通りなら有罪判決を受け入れることだが、記者会見で「元助役はクロかシロか」を問われても回答を拒み続けた。「クロ」と言い切れない何かが木下氏にある。
 7月29日の記者会見後、発表内容から飛躍した「元助役の収賄はシロ」という報道に対し、「報道機関の判断だから」(10月27日の臨時議会)で済ましている。
 このような重大で、市民の関心が高いデリケートな問題に異議すら申し立てないことは、木下氏自身が「シロ」を擁護する立場にいると言われて仕方がない。
事実、6月議会中の副市長起用を議員に打診した際には「元助役の収賄は成立しない」「嵌(は)められた」と述べている。
 非公式な場の話だろうが、居酒屋発言だろうが市長の言葉は常に公式である。それなのに10月臨時議会の弁明では「意図も予定もない」と全面否定している。同議会に副市長選任案を出したのはアリバイづくりそのもの。
 市民が知らない事では真っ赤なウソを付いている。

特別職の助役に「休職」はない。刑の確定まで執務させた? → ウソとスリカエで市民を操作
 「元助役を起訴時点で解職したのは誤りだった。本人に謝罪した」件。 「行政の原則に従い解職は判決確定を待つべきだった」(誇れる草加をつくる会News9月24日号)と理由を述べている。
 厚労省の村木氏を引き合い、彼女の冤罪や検察の暴挙と重ね合わせたいのだろうが、2つの事件は基本的に異なっている。
 一般の公務員には、起訴休職の制度がある。だが、特別公務員の助役には「辞職」「解職」「住民によるリコール」の3つがあり、「休職」はない。リコールは議会の4分の3以上の賛成で成立する。それだけ特別職は重要な位置づけがなされている。
 もし、刑の確定まで解職を待つとしたら、勾留されて職務が出来なくとも給与を払い、保釈後は刑事被告人のまま職務を遂行させた? 任期満了まで数ヶ月だったが、再任もしたのだろうか。
 汚職事件の全体を隠し、時間を止めて解釈する意味は全くない。一方、解職した自身の責任は謝って済むのだろうか? 
 当時、事の重大性から「辞職がない以上、遅かれ早かれ解職しかない」と出した結論だった。ほとんどの市民は納得している。
 「行政の原則に従い」と言われると、市民の多くは信じてしまう。ここにも基本的なことを誤魔化し、市民を操作する意図がありあり。

「団長が法令遵守に違反」 発言 →自分が作った“ 不当要求防止条例 ” に違反したことの告白
 10月臨時議会で木下氏は議会の会派団長2人を「法を守らないのは誰か」と非難した。事実ならこれは議員による口利きであり「不当要求」である。
 草加市は、平成13年12月(木下氏が市長に就任して4ヶ月後)議員が実質オーナーの特別養護老人ホームの不正事件をきっかけに議会議員政治倫理条例を制定、議員の不当要求や口利き行為についてエリを正すことにした。4人以上の議員で議長に審査請求できることになっている。
 また平成19年3月、暴力団幹部の恐喝事件を機に、草加市政における公正な職務執行の確保に関する条例を制定、「市長は自ら不当要求行為等を受けたときは(中略)対策会議に諮り、(中略)対策会議は必要な調査を行うものとし、その概要を公表する」とある。
 木下氏は「不当要求」を受けたにもかかわらず報告しないという違反を犯した。暴力団が絡んだ事件で、自らが作った条例を破ったのである。“爆弾発言”として用意したのだろうが、自分の法令違反を明かしてしまった。
 この発言を受けて「真相究明すべきだ」と動議を出した市長派の議員たちは、この条例を忘れて熱弁を振い議会空転を演じた。
 一方、これまで沈黙していたのは、各団長と良好な関係だったから。裏返せば、常に情実行政をしていたことになり、関係が悪化すれば脅しに使うということ!

コラム《一筆献上》
 草加市元助役の汚職事件。背景には木下市政に反発する勢力の関与が色濃くあり、一面、政治闘争だった。しかし事件として司法判断が確定した以上、潔く受け入れざるを得ないし〈異議〉は同じ土俵しかない。県政のベテラン政治家は「全てを背負ってこそ、なんぼのもの」と話す。
 名誉・信用回復。打つ手は、都合のいい事実や理屈をもとにした「小さな政治」ばかり。が、市長や行政や議会、市民までもが踊る。快感に違いない。なんの責任も問われずに一大歌劇を演出できるのだから。この先、本当に安寧を掴むことができるのか? この代償は何人にも大きい!

《これまでの経過》
6月、汚職事件再検証の結果を基に議員へ打診
→「行政行為として元助役は不正な指示をしていない」
→「元助役の収賄は成立しない」「元助役は嵌(は)められた」
→「副市長にしたい」 →失敗
・6月議会中盤、元助役が周辺に「副市長になれる。市長が議会の根回しをしているので大丈夫」と話す。
7月29日 木下市長が記者会見
→「行政行為として(元助役に)不正な指示はなかった」
→「起訴時点での解職は誤りで謝罪した」(副市長の件は触れず) 
→地元紙に「元助役の収賄はシロ」の記事
●8月 「広報そうか」に木下市長の署名コラム
・経営者の会が議会に「議員定数削減の請願」を提出
9月2日 定例市議会〜木下市長が記者会見や広報紙の内容等報告
→議員が元助役の副市長起用の真意を質問。「副市長については白紙」と答弁。議会は納得せず
→木下市長の不信任決議(賛成24、反対5、棄権1)
  ・上田清司知事「判決は受止めるが元助役に不正はないと言うのは自己矛盾。リーダーとして
   不適格と決めたのはやむを得ない」
→木下市長が議会を解散〜「誤解による不信任」「行政の空白を避ける」と辞職を選ばず
   ・清水勇人さいたま市長「市長も辞職し一緒に信を問うのがスジ」
  ・経営者の会が木下市長に「議員定数の削減を求める要望書」提出
10月
→市議会議員選挙(不信任賛成の保守現職3人が落選するも保守新人4人全員が賛成派に
  入り23人。不信任反対派は1人増え7人)
→木下市長が議会招集(議会と調整する慣例を止め裁量で招集告示、異例の31議案送付、
  副市長の人事案件を追加送付)
→不信任回避の動きが活発化(誇れる草加をつくる会での発議を受け、
  町会長の1人が市政正常化へ向けた「緊急提言」の署名を集め議会に要望。
  内容は無駄な経費がかかる市長選は止めて=不信任決議しないで。109名中75名が署名)
  ・議員への脅しまがいの電話や謀略的情報が流布される
10月27日 臨時議会 木下市長が一身上の弁明
→「元助役の復職の意図も予定もない」「町会長らの要望があるように1ヶ月の政治空白と
  約7000万円の税を投入する必要あるのか」「(団長2人が)法令遵守に反している」
  「なぜ議案審議せず冒頭に不信任なのか」
  ・団長の法令遵守違反を巡り「解明すべき」の動議で空転。不信任反対の7人が「真相究明後に
   本会議の再開」を求める。不当要求防止や議員倫理の条例で対応すべきと却下
→不信任決議を再可決(賛成23、反対7)
  ・会期2日間、補正予算など8件可決し、他は閉会中の継続審査に。
   議員定数等議会改革特別委員会を設置) 
→木下市長失職(市長職務代理者に田口嘉則副市長)→市長選へ

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